■ 電動工具について

私が木工を始めた頃、木ネジの揉み込みは「ヤンキー」と称する半自動のドライバーで行っていた(先端チャックとハンドル間の軸にスパイラルに溝が切ってあり、ハンドルを上下動させることにより、先端に回転運動を与えるというもの)。家具材は概して堅い木が多いので大汗をかいての作業だった。数年後充電ドライバー、さらにはインパクトドライバーが急速に普及し、木ねじ緊結作業はこれらに変わってきた。あの「ヤンキー(米国から入ってきたから、このように称するの?)」は今では博物館行き?。
様々な力仕事、技能の多くが今では優れた電動工具が代替してくれるようになってきた。
とてもラクチン。しかしこれを謳歌するには対象とする素材を良く知り、電動工具の能力の優れたところと同時にその限界も知らねばならない。

手工具でやっていた昔は自ずから修練とともに、知らず知らずのうちに身体が素材の特性を覚え、技能というものを体得してこれたのだろうが、今の時代はこれらの多くが電動工具に代替され、熟練職人のごとくにこなすことが可能になってきた。しかしその実体は時として、素材の固有の特性を無視し、力任せにねじ伏せてしまいかねない。

職業訓練校出の弟子志願者に機械を使わせると多くの子は丸鋸の選択に関心がない。
縦挽きには縦挽きの、横挽きには横挽きの刃が付けられているのだが、動力で強引に切れてしまうので、選択の必要性を感じないようだ。
しかしこれを手鋸でやろうとすれば選択を迫られるのは必至だ。熟練によって初めてまともに使うことができる手工具と誰でも経験を問わずそれなりに切れてしまう動力機械とでは、各々意識的に相対化しなければ本来の性能を発揮させることはできない。

科学技術が飛躍的に発展した時代においても、そこに至る歴史と経験を踏まえることが肝要。
あくまでもそれぞれの手工具の延長線上に電動工具があるという位置づけがないと逆に工具に職人が使われてしまうという転倒が起きかねないことを知るべきだろう。

 工房 悠の木工用電動工具は概略以下のようなラインナップです。
>>それぞれの「機種」、右写真をクリックしますと詳細情報ページにジャンプします。
機 種 製造者名 型 式 仕 様
 のこ
1 造作用丸鋸 Makita 5612A 9A のこ刃 
165mm
2 スーパージグソー BOSCH GST 60PBE 520w
500〜3100rpm
 ルーター
3 ルーター 日立工機 M12形 14A 22.000rpm
コレット12mm
4 ルーター BOSCH 1613EVS 1.200w 22.000rpm
コレットチャック 1/2"
5 ルーター PORTER CABLE MODEL 630 2.000rpm
コレットチャック1/2"
6 ルーター RYOBI R-505 15A 2.200rpm
コレット12mm
 トリマー
7 トリマー BOSCH 1210-TR型 500w27.000rpm
コレットチャック6mm
8 トリマー RYOBI TRE-55 5.5A 24.000rpm
コレットチャック6mm
9 トリマー RYOBI
 ビスケットジョイナー
10 ビスケットジョイナー Lamello Lamello Top10 700w 10.000 r.p.m.
Cut Depth:8,10,12mm
11 RYOBI DETAIL
BISCUIT JOINER
RYOBI DBJ50 19.000rpm 3.5A
Cut Depth : 3,4,7 mm
 サンダー
12 ランダムディスクサンダー BOSCH 1370 DEVS 5A 80〜200rpm
ペーパーサイズ150φ
13 ランダムオービタルサンダー BOSCH GEX 125A 345W 125φ
14 ベルトサンダー HOLZHER 2420 VS 10.5A ベルトスピード:200〜 300m/min
15 ポータブルサンダー RYOBI S-500 1.8A
10.000rpm
 アングルグラインダー
16 アングルグラインダー BOSCH 1347A 600w 11.000rpm
17 アングルグラインダー 日立工機 DGB-100A
 充電式 電動工具
18 充電式インパクトドライバー 松下電工 EZ6605S12K 12V
19 充電式インパクトドライバー 松下電工 EZT640-A 4.8V
20 充電式アングルインパクトドライバー Makita 6940 DWH 9.6V
21 充電ドライバー
 スミ打ち8
松下電工 EZ6780C09K 9.6V
 ドリル
22 電気ドリル Brack&Decker 719330 4A   0〜2500rpm
チャック 10mm
23 振動ドリル BOSCH 1182-7型 510w  チャック13mm
打撃数 : 0〜52.800
 電気かんな
24 電気かんな Makita M192 11A 16.000rpm
110mm
25 曲面かんな Makita 1002B-A 11A 15.000rpm
110 mm
trimerrouterjigsawsaw
drillchargesanderbiscuit

木工職人のたいていは日、欧、米、3種の長さの単位を使い分けることができます。
尺貫法、メートル法、インチですね。どうしてかな?

・尺貫法 戦後長期にわたって公的には使用禁止されてきていた。永六輔が尺貫法の復活に尽力したことはつとに知られたところだが、職人の世界ではお上が規制しようとも連綿として使ってきていた。何故ならば、建築、木工の分野では単にそれまでの習慣といったことにとどまらず、単位としての合理性に叶っていたからだろう。流通している既製品の木材の厚みの単位は今も尺単位だ(例:24mm,27mm,34mm,45mm,などはどう見ても8分、9分、1寸1分、1寸5分だろう)。
また金属の分野でもネジの呼称として・・分、という尺度が生きている。

・メートル法 設計図面をはじめ、あらゆるところにこの単位は勝ち誇っている。

・インチ このサイトにアクセスしていただいている人にはパソコンをめぐるハード、ソフトの単位のあらゆるところにインチが用いられていることにはとうに周知のことでしょう。(因みに愛機の Power Book G4 の外装厚みはほぼ 1" です。 >>これは余談でした)
現在地球上でこのインチ、ヤード単位を公式に用いているのは米国、オーストラリア?あたり、ですか。米国一極集中主義の病弊はまさかメートル法を駆逐する !! などと言いだすことはないとは思うが、日本でもちゃんとインチが生きています。石油の衡量単位、ゴルファーの好きな単位などだけではありません。

木工機械、刃物の単位の呼称は圧倒的にこのインチが幅を利かせています。
まず木工機械の主軸のそのほとんどは 1" (=25.4mm)です。
機械の能力を示す単位の定盤の幅は305mm(=12"), 406mm(=16")
刃物では、丸鋸の外径サイズは205mm(=8") , 305mm (=12") ,380mm(=15")405mm(=16") etc
 同様に角のみの刃 6.4mm(=1/4") , 9.5mm(=3/8") , 11mm(=7/16) 12.5mm(=1/2") etc
 またルーターのビット軸径も 6mm(=1/4) , 12mm(=1/2")
それらのほとんど全てがインチ単位で設計制作されていることがお解りでしょう。

これは日本に木工機械が輸入された経緯に起因することを遡れば理解できることだろうと思います。
ことほど左様に、インチ文化はどっぷりと木工機械の世界にはびこってます。
こうしていつの間にか木工職人はユニバーサルな換算得意(特異?)人間になってしまうのです。
職人の経歴を推察するには簡単な換算をやらせてみるのも良いかも知れない(ハハハ)

長さの単位は各国様々ですが、いずれも身体のパーツの長さに期限を持つものが多いそうです。
因にインチ、寸は親指の幅、尺は人間が手を伸ばして測量しているという象形文字に起源があるそうです。

   

機械、電動工具のメンテナンス、修理について

当地静岡は家具産地。木工機械屋は他地域より充実している。
機械のメンテナンスは従って機械屋さんが定期的に点検してくれたりという環境だ。しかしやはり機械屋は機械屋。木工のことについては素人さんが多い。
本来はユーザーが日常のメンテナンスから、できる限り修理などもやりたい。
自動プレナーなどは良い削りができたり、できなかったりと、調整ひとつで変わる。
冒頭記述したように、やはり機械、工具も手工具の延長線上にあるという認識があれば、己の手先として機械工具のご機嫌も解ろうというもの。
良いクラフトマンは機械、工具設備の面においてもゼネラルマネージャーでもありたいものだ。