Monologue 2004

 Apple経営理念と、木工家
Oct.1.2004

ボクはパソコンはほとんど使いませんがMacを少々嗜んでます。(Windowsもありますが、ほとんど死んでます)
ご存じのようにApple社は他のパソコンメーカーと大きく異なることとして、ハード、ソフト両方を開発、制作、販売していることにその企業的特異性があります。

ボクがMacを導入したのは決して早くからではありませんし、今もってビギナー領域を脱しているわけではありません。Macを導入したのは確かパソコン業界のエポックともいえるWindows95の1大ブレークの頃でした。しかし何故Windowsにしなかったのかといえば、知人の薦めがあったこと位で決して比較検討した結果というものでもありませんでした。聞くところによりますとMacの世界的シェアは5%ほどのようです。しかし使用環境もWindowsとのLAN接続、ファイル交換などが頻繁にあるというものでもなかったので、十分満足しています。(しかし、Windowsが基本の職場でMacを導入しようとしている人に誤解を与えてはいけませんので、一言申し添えると、現在のMac OS は保存ファイルにも拡張子が付きますし、事務ソフトの世界標準強力ソフトOfficeはMicrosoft社もMac版の開発に投資を惜しんでいません)

さてApple社は先に述べたようにハード、ソフト両方の開発、生産をしていることにその特異性があるわけですが、この他社との異なった企業のあり方が、ユニークで楽しいMac世界を形作っていることは間違いないでしょう。ソフト開発においても自社のOSを基本としたそれですので、シームレスな開発ができることでの優位性があることは間違いありません。

現在のOSバージョンは Mac OS X 10.3 というものになります(Xはテンと呼称します)。
Macの現行機種の起動OSは全てこの Mac OS X になりますが、数ヶ月前まではクラシックと称する Mac OS 9.××といったものが付属していて、アプリケーションによってそれぞれを選択する、といった使われ方をしていました。ユーザーの都合でHDDに2種のOSを振り分けた環境にするというのではなく、デフォルトで2種のOSが搭載されるというユニークな構成になっていました。
これは OS X という革新的なプラットフォームを構築してはみたものの、ソフト開発メーカー、あるいはユーザーがなかなか新しい OS に切り替えてくれないという経過措置的なものであったわけです。しかしボクにしましても OS X に切り替えましたのは、コンピューターの落下事故、マシーンの更新をきっかけとしたものでした。

個人的に申せば OS X の快適な環境にすっかりはまり、もはや OS 9 に戻ることはできなくなっています。一部のアプリケーションソフトが未対応ですので、切り替えて使うこともありますが、使い勝手、GUI( グラフィカル ユーザービリティー インターフェース)に彼我の差は歴然。

最近のApple社の商品開発をめぐるエポックはいうまでもなく iPod の爆発的ブレークにあります。 Apple社、Mac を知らなくても iPod を知らない人はいない、といった風です。
確かに PowerMac G5 市場に投入したものの、その後これといった大きな話題を呼ぶようなものが新規投入されないなか、ひとり iPod だけが気を吐いているといった様子でした。
1週間前にやっと期待されていたコンシューマー機種 iMac が新発売され Apple 社はコンピューターメーカーであったことを知らしめてくれたわけです。

さてこの iPod のブレークはどのように評価されるべきなのでしょう。
MP3再生プレーヤーは iPod に限ったものではありません。多くのメーカーが既にさまざまなMP3プレーヤーを出していました。これらと比し iPod は何故高い評価を受けたのか。デザインが優れている、価格が適性、音質が良い、遅らばせながら、Windows 対応にもなった、etc 様々な理由があげられるでしょう。
しかしやはり本質的な優位性はといえば、やはりこの iPodを駆動するソフト iTunes の出来の良さにあるのだろうと思います。
iPod の一人勝ちにホゾを噛んでいた日本のオーディオメーカーはこぞってこの iPod 打倒を目標に様々な機種を新規投入してきているようです。
しかし恐らくは iPod ほどの人気機種にはなれないだろうと思います。
つまりどういう事かと言いますと、Apple 社のハード、基本ソフト(OS)、アプリケーション全てを自社で開発しているという強みに比し、残念ながら日本のオーディオメーカーにしても、パソコンメーカーにしても基本的開発態勢の差が歴然としていて勝ち目がないであろうということです。
さらにまたこうしたエンターティメント系の分野での開発哲学はApple社に一歩も二歩も譲らざるを得ないということにあるように思います。

しかし残念ながらこの iTunes も日本では十分にその機能を生かし切れていません。それはApple社が戦略的に進めているミュージックストアが日本では許可されていないという特殊な事情にあります。
全米ではこのiTunes 投入当初から、さまざまな法的規制を緩和させ、ネット上から99セント/1曲 でダウンロードできるようになっていて iPod の売り上げもこのダウンロード数の伸びとともに相乗的に伸びていきました。欧州でもこの春から解禁。
日本では以前も述べたように音楽会社は猛烈に反対していてこの Apple 社のミュージックストアを目の敵にしているようで、未だ解禁の見通しは立っていない。(日本の音楽ソフト業者はオーディオ、パソコンメーカーと一体化していて、 iPod の売り上げに繋がるようなミュージックストアは自社のハードウェア部門の市場シェアを奪う、という立場のようです)

このような狭隘な市場判断にもかかわらず、日本での iPod の人気が伸びていることは如何に驚異であるかを逆に示しているともいえ、日本のメーカーとしては全くおもしろくない状態ではあるようです。

さて最近のニュースではCCCDというコピー防止CDの見直しが行われるとのことのようです(http://www.avex.co.jp/)。どうも他国ではこのような音楽ファンを逆なでするようなコピーガードなどというものはないようなのですが、多くの大手音楽会社では CCCD を掛けた CD がまかり通っていました。
これはCD/Rなどへの複数コピーを防止し、著作権を保護しようという考えに基づくものですが、オーディオ機器、パソコンの1部では再生できない、あるいは機器に損傷を及ぼすなどといったことも発生していて、大きな問題になっていました。
これに対する音楽ファンからの異議申し立て、あるいは iPod の普及に見られるパソコンHDDへのMP3方式での保存といった新たな音楽の楽しみ方というものが一般化しつつある情勢を無視できないと考えた音楽制作会社もそれまでの非を認め改善に動こうとしているのでしょう。

こうした動きからApple 社のミュージックストアの解禁も可能性があるのかな、などと見ていますが、さてどうなのでしょうか。

さて著作権という問題ですが、デジタル社会のこの問題は確かに深刻です。
1ユーザーとしても等閑視するわけにはいきません。
しかし音楽ソフトのコピーということでいえば、 CD からパソコンに取り込み、MP3フォーマットに変換し、カジュアルに楽しむ、という iPod などの使い方は決して CD 売り上げをただちに低減させるものであるかは、様々なデータを突き合わせ検証してみなければなりません。個人的な経験でいえば、死んだ状態であった CD をPCに取り込み聞くようになったし、新しい音楽への興味も広がり、CD ショップへ足を運ぶ回数も増えている。

デジタル社会というものは様々な分野で革命的な改変をもたらしていることは事実で、音楽の世界でもその楽しみ方は変わりつつある。音楽業界もそうした情勢に踏まえた柔軟な対応をすべきであろうし、ファンを含めた様々な議論の積み重ねから、知恵を出し合い、ともに豊かな音楽文化を創り上げていきたいものです。

さてこれからが本題。
木工家というあり方について、です。
単に木工職人でもなく、デザイナーでもなく、家具ショップでもなく、木工家というスタンスについて考えてみたいと思います。
PC の世界での Apple 社のスタンスと、木工家というスタンスをアナロジーしようというとんでもない話でありますが、前置きがあまりにも冗長になりましたので、本題は次回です(単にまとまっていないだけなのですが・・・)。

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