Monologue 2004

 霜月の憂鬱
Nov. 1.2004

霜月11月です。季節は早足に冬へと向かっているようです。
新潟中越地震の被災地では冷たい雨が、痛めつけられた身体と悲嘆にくれる心に無情に降り注いでいるようです。
数週間もすると降雪も始まるのでしょうか。
自然災害はいつも人間社会が営々と築き上げてきた文明を、一気に破壊してしまう恐ろしさがあります。

ここ静岡では30数年前から東海地震が近いと問題にされ、予知のための研究と、対策が進められてきた。
しかしこの度の新潟中越地震は、専門家に言わせれば、「最も崩壊しやすい地層だった・・」、あるいはまた「あんな山奥に人家を造らせるなんていうのが間違い・・」などと訳知りに語るが、こんな破廉恥な放言は置いておくとしても、残念ながら予知技術に関しては未だ防止対策としての有効性を示し得ないでいるのが実体であろう。
被災直後の救援態勢、また長期的展望にたった被災者援護など、多くのところで、至らなさが指摘されているが、ある専門家は予知に回す研究予算はむしろ地震後の救援態勢の構築のための整備費用として使うべき、と喝破している。これには大いに耳を傾ける必要性を感じている。

・・・今日は雑記的内容に終始します。

先週 JICA(国際協力機構)からの依頼により、インドネシア家具製作者、デザイナー向けへの「日本市場参入のための商品デザインセミナー」という企画の講師をしてきた。
セミナーは JICA-Net というテレビ会議システムを利用した遠隔技術協力の一環。つまり現地に足を運んで行うのではなく、日本とインドネシア、バリのそれぞれの会場をテレビ会議システムで結び、レクチャーおよび質疑応答するというもの。
ボクにはこのような経験はこれまで皆無。
講師の依頼はWebサイトを検索することで選んだようなのだが、最初は経験ない、ということで首肯しなかったのだが、「制作現場の人」という条件が重視されているようでもあったので、しばらくして応諾。

内容としては送られてきたインドネシアのサンプルの家具を下見をして、これにコメントしながら日本での市場参入の可能性を探るというものだ。

制作クォリティーはなかなかのレベルであったが、やはり手加工のプロセスによる加工精度のバラ付き、木取り精度の低さから、トータルなクォリティーとしての問題を指摘せざるを得ないものであった。
またデザインとしては、彫刻、レリーフを多種に施していて、精緻な仕事ぶりを見せていたが、これはまた民芸品的評価との違いをどこにおくかといった際どいものでもあり、なかなか難しい。

しかしバリの家具に無闇にモダンを求めることはお門違いであり、やはりバリならではのアジア的要素を如何に正しい市場的評価に繋げるのかといった考え方で探るべきであろうと感じた。

また現地家具製作者、およびデザイナーの人たちにも日本の伝統的な家具文化と、現代の家具市場について、基本的な調査、研究をしてもらうことなどにも触れることで、彼我の文化の違い、あるいはまたアジア的通底、といったことを通してバリの独自性を積極的に位置づけ、そして市場参入への意気込みを掻き立てるべきとアドバイスした。

実はこれに先立ち、地元で活躍されているデザイナーにもインドネシアに数年常駐してデザイン指導していた先輩もいたので、訪ねアドバイスを受けたり、いくつかのデザイン資料、統計資料などを検索し、準備にあたってきたのだが、その過程で、これ以上日本へ家具参入を招けば、より国内産業は圧迫される、との懸念を示す人もいた。
これは全く正しい見方であることは疑わないが、しかし洪水のように工業製品を低開発国へ輸出している国が、彼の地からの家具の輸入は止めて欲しいといった身勝手な立場を取ることは国際的貿易の倫理観からは決して正当な見方とは言えず、傲慢不遜との指弾をうけるだけであろう。

数日後、米国大統領選挙がある。開票結果は日本時間11/3日か。
ブッシュ再選なるか、民主ケリー候補がうち破るか、米国一国の国内問題に留まることではなく、まさしく地球規模での世界の覇権をめぐる帰趨を決する一大政治イベントだ。
もちろんイラク先制攻撃とそれに続く米国型民主主義なる押しつけは全くといって奏功していない事態を、米国市民がどのような評価を下すのかという喫緊の問題への判定として世界が注目していることが最大の焦点であろう。
「悪の枢軸」というばかげたイカサマ理論がこれからまた4年間継続するのかと思うと暗澹とした気分を通り越して、今という同時代を生きることのアホらしさを覚えてくる。卑屈な笑いで4年間過ごせるものであろうか。
「1度目(1期)は悲劇でも、2度目(2期目)は喜劇・・・」

しかしまた中長期的にはこのままの路線で行くと米国の長期低落下は必定。いよいよ中国との貿易バランスは後戻りできない勢いで赤字を膨らませていく。
これは共和、民主いずれの政権運営でも抜本的対策の魔法の手は持ち合わせていないだろう。「自由貿易」を信奉するブッシュ共和党にしても対中、対日経済政策では保護貿易主義にならざるを得ないほど国内産業の長期低落下傾向は止めようがない。民主党ケリーも自由貿易主義者のようで、単純にこれまでの政策綱領を踏襲しているものではないようだ。

家具産業の衰退は深刻のようで、過去10年間に中国からの家具輸入は25倍になっていることで、ブッシュはあわてて緊急輸入関税を掛けてきている。ブッシュ政権の間だけでも家具産業従事者のうち3万5千人が職を離れた(家具産業従事者の28%)。

ことは家具産業だけに留まらず、今やあらゆる産業で国際競争力を失いつつあるようで「米国ではもはや中国の欲しがるものは何も造ってはいない」状態にあるという。

さて下馬評はこのところケリー有利とのことだが、こればかしは開けてみなければ判らない。前回はフロリダの結果が二転三転、ズルしてブッシュに決まった経緯があったが州によってその投票システムもまちまちで、また何か不正が行われることも考えられなくはない。(マイケル・ムーアの「華氏9/11」の見過ぎか)

先にインタビユーに応えて「ブッシュに頑張ってもらいたいね・・・」などと恥ずかしげもなく異例な発言をした我コイズミだが、ケリー圧勝となったらどうするのだろうか。

アメリカの世界戦略の過去、現在、未来をパースペクティブに分析、気骨ある言語学者ノーム・チョムスキー(MIT教授)著の新刊「覇権か生存か」は好著です。

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