工房悠の木工家具は合成樹脂塗料を排し、漆、植物油などのエコロジカルで安全無害な自然有機素材、天然塗料を用いています。
現在、住宅、家具の塗装の主流は、ラッカー、ウレタン塗装に代表される合成樹脂塗料です。これは近代の工業化社会のなかでの生産性、堅牢性、などを追求してくてきた結果としての技術革新の成果の一端でした。しかしこれは環境、人体の健康に様々な弊害をもたらせてきていることが明らかになってきています。(シックハウス症候群、アレルギーなど)
人は、健康で安全な生活を送る権利を有しています。しかし現状は有害物質だらけの住宅建材に囲まれ、また施工業者も作業工程での皮膚接触、消化吸入のリスクにさらされていますし、さらに大気の汚染はオゾン層の破壊の原因にもなっています。
従って、家具の材料、製作工程にもエコロジカルで安全な方法をとらねばなりません。工房悠が行うオイルフィニッシュ、拭漆はいずれも自然有機素材、天然塗料ですので安心してお使いいただけます。
さらにまた、健康的塗料というだけではなく、素材の本来の美しさを引き出す能力からみてもこれらは最良の塗料ということができるのです。合成樹脂塗料は素地の善し悪しにかかわらず、塗装プロセスで色調の調整、塗面の平滑調整ができ、そこそこの仕上げをすることができますが、本来の素材の美しさを引き出すものとは残念ながら言えません。
拭漆という手法は生漆(きうるし)を10数回塗っては拭き取り、塗っては拭き取りを繰り返すことにより、素材のもつ本来の木味を引き出してくれますし、他の塗料では出せない独特のつやと輝きをもたらせてくれます。(従って日本の白木に見られる木目のきれいな材種にはとても向いています)
ともすると「漆」というだけで、何か高級品、日常使いにはちょっと、取り扱いが難しそう、といった感があるやも知れませんが、心配には及びません。漆塗りは耐水性は強く、程々の熱にも強く、耐薬品性も合成樹脂にひけを取りません。むしろ、合成樹脂の塗装は完成、納品されたときが最高の状態で、そこから劣化がはじまるのに対し、漆塗りはむしろ逆に経年変化で風合いが増してきます。最初は黒ぼったい風合いが一年も経過すると透明感が増し、素材の木目はすっきりと現れてきます。
一方、植物油を用いるオイルフィニッシュという手法は、合成樹脂塗料とは異なりいっさい塗膜はつきません。塗膜で素地を保護するのではなく、生地に深く含浸させ、中から固めるという手法ですが、塗面はいわゆる濡れ色となり、落ち着いた深い味わいを醸し出してくれます。確かに使用環境に関わることですが、耐熱性に劣るとか、濡れた、熱いお茶碗を置くと輪ジミができやすいといった欠点があるのは事実ですが、良い素材を用い、良い仕上げをした木工家具にはこれにまさる仕上げ方法はないと、確信を持っていえます。
特に フ ゙ ラ ッ ク ウ ォ ー ル ナ ッ ト、 ロ ー ス ゙ ウ ッ ト ゙などの濃色材にはたいへん好都合で、材色が冴えわたり、木目が明瞭になりますので、素材の美しさを生かした仕上げになります。
お使いになるユーザーがその家具の使用環境を考え、上述のことを理解していただき、必要に応じメンテナンスをしていただけるとするならば、ぜひこの手法をお勧めします。
ただ漆は供給量が少なく、高価になり、またオイルフィニッシュのその工程数は化学塗料に比しはるかに多くなり、生産性が低いという欠点もあり、量産現場では避けられてきていました。
塗装工程のみならず、生産過程全般においての問題ですが、工房悠は持続可能な社会の再構築に寄与するというスタンスからも生産工程では化成素材を排除し、環境適応型の生産現場として常に意識を高く持ち続けたいと考えています。
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